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とつがやがて解決される

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とつがやがて解決される


 続く何日間かは、〈要塞〉の殺風景な広間も来賓や各国の使節などで、賑やかな色彩にあふれかえった。かれらは談笑し、噂話を交わし、人目につかない片すみで駆け引きに忙しかった。人々がたずさえてきた豪華なさまざまの贈り物が、巨大な謁見の間の一方の壁にそって置かれたテーブルの上にずらっと並んでいた。だが当のガリオンにはそれを見にいったり、あけたりする暇はなかった。かれは相談役とともに、トルネド避孕 藥ラ大使とその一行を相手に婚約の細かい取り決めをつめる作業のために、一日中自室にこもっていた。
 ヴァルゴンはかれの流儀に従って、ガリオンの言葉じりをとらえては、最大限の譲歩を引き出そうとしていた。一方ブランドはセ?ネドラの権利を少しでも削りとろうと、あれこれ条項や規定をつけ加えようと躍起になっていた。二人が押し問答するのをじっと傍観するだけのガリオンはしだいに窓の外を見る回数が増えていった。リヴァの空はどこまでも青く、風に流されたふわふわの白い雲が、足早に通り過ぎていくのが見えた。島の殺風景な岩山の上にも春の最初の緑が芽吹いていた。開いた窓から風に乗ってかすかに羊飼いの娘が群れを呼ぶ歌が流れてきた。娘の声には生のままの純粋さがあり、その歌い方は避孕 藥まるで百リーグ以内に誰も聞いている者がいないかのように屈託がなかった。最後の調べが消えていくと同時にガリオンは深いため息をついて退屈な交渉の世界に注意を戻すのだった。

 だがこの春浅い日々、かれはさまざまなことがらに注意を奪われていた。ちぎれたマントの男をかれ自身で探すことは不可能なので、かれはレルドリンに調査を依頼せざるを得なかった。だがそのレルドリンも常に当てになるとはかぎらず、暗殺容疑者の捜索という仕事は血の気の多いアストゥリアの若者の想像力にすっかり火を注ぐ結果になっていた。若者はこそこそと疑わしげな目つきで〈要塞〉を忍び歩いては、何の収穫もなか避孕 藥ったことを陰謀めかして耳打ちするのだった。レルドリンに打ち明けたのは恐らく失敗だったのかもしれないが、他に頼れる人物がいなかった。もしこれを他の友人たちに打ち明けようものなら、かれらは一様に驚きの悲鳴をあげずにはいられないだろう。そうなったらすべてが表沙汰になってしまう。かれは何と避孕 藥してもそれだけは避けたかった。誰が何の目的で短剣を投げたのかがわかるまで、かれは暗殺者に対する処遇を決めることができなかった。恐らくは単なる私怨以上の理由があるとも考えられる。レルドリンなら口の固さにおいては絶対に信用ができるのだ。もっとも〈要塞〉中の追跡の許可を与えられた若者が、職務を逸脱する危険が多少あることは否めないが。レルドリンの手にかかるとほんのささいなできごとでもたちまち大災害を引き起こしてしまうので、ガリオンはいつの日か暗闇から友人の無防備な首に別の短剣が投げつけられるのではないかと本気で心配せざるを得なかった。
 婚約の儀式を祝うために島を訪れた来賓のなか避孕 藥には、ザンサ女王の代理として参列するセ?ネドラのいとこのゼラがいた。はじめは内気だったドリュアドの乙女も、自分が若い貴族たちの関心のまとになっていることを知ったとたん恥じらいを捨てた。
 ザンサ女王からの結婚の贈り物は、ガリオンの目にはいささか奇妙にうつった。ゼラの手から渡されたのは、一見何のへんてつもない葉に包んだ避孕 藥芽を出しかけた二個の木の実だった。だがセ?ネドラはこの贈り物をひどく喜んだ。彼女はただちに二個の木の実を土に埋めるのだといって聞かず、私室に隣接する小さな彼女の庭園に走っていった。
「なかなかすてきな贈り物だね」じめじめした黒土にひざをついて、ザンサ女王の贈り物を埋めるための穴をせっせと掘る小さな王女を見守りながらガリオンは疑わしそうに言った。
 セ?ネドラはきっとかれを見上げた。「失礼ですが陛下にこの贈り物の意味がおわかりになるとは思いませんわ」彼女はガリオンをなじるときの、あのわざとらしく丁寧な言葉遣いをした。
「やめてくれ」ガリオンは不機嫌な声で言った。「陛下なんて呼びかたじゃなく、ぼくにはまだちゃんとした名前があるんだからね。きみがそれを忘れるはずがない」
「陛下がどうしてもとおっしゃるのなら」彼女はつんとして言った。
「国王の名において命じる。ところで、こんな木の実が何でそんなに大事なものなんだい」
 彼女は哀れむようなまなざしでかれを見た。「話したってどうせあなたにはわかりはしないわよ」
「きみがちゃんと話してくれなければわからないよ」
「あら、そう」彼女の口調は腹だたしくなるほど高慢だった。「片方ばわたし自身の木のもので、もう一方はザンサ女王からよ」
「それで?」
「ねえ、まったくどうしようもないお馬鹿さんだと思わない?」王女はいとこに向かって言った。
「セ?ネドラ、かれはドリュアドじゃないのよ」
「たしかにそのようだわ」
 ゼラはガリオンの方を向いて言った。「正確に言えば、これはわたしの母から贈られたものではありません。これは木自身からの贈り物なのです」
「何でそれを最初に言ってくれなかったんだ」ガリオンは非難がましい口調でセ?ネドラに言った。
 王女はふふんと鼻を鳴らし、土を掘ることに再び没頭した。
「まだ若木のうちにセ?ネドラが二つをたがいに巻きつけさせるのです」ゼラはさらに説明を続けた。「若木はからみあったまま成長して、たがいに抱きあうようにして大きな一本の木に成長します。これはいわばドリュアドにとっての結婚の象徴なのです。二つのものがやがてひとつになる――ちょうどあなたとセ?ネドラのように」
「そればかりはまだわからないわね」セ?ネドラは移植こてを忙しく動かしながら再び鼻を鳴らした。
 ガリオンはため息をついた。「そこまで木が忍耐強いといいんだけれどね」
「木というものは、たいそう忍耐強いものですわ、ガリオン殿」ゼラはそう言ってから、セ?ネドラにわからないようにそっと手招きした。ガリオンは彼女のあとについて庭園の片すみへ行った。
「口ではあんなこと言ってますけれど、いとこはあなたを愛しているのですわ」ゼラは静かな声で言った。「あの人は絶対に認めないでしょうけれど、本当にあなたが大好きなんです。わたしにはよくわかるんです」
「だったら何であんなに突っかかってくるんだろう」
「セ?ネドラは人に強制されるのが大嫌いだからですわ」
「別にぼくが強制してるわけじゃないのに、どうしてぼくにばかり当たるんだ」
「それはあなたしか当たる人がいないからじゃありません?」
 ガリオンは今までそんなことを思ってもみなかった。かれはそっと庭園を後にした。ゼラの言葉は、かれの抱えこんでいる問題のひかもしれない可能性を与えてくれるものだった。むろん最初のうちはふくれ面をしたり怒ったりするだろうが、やがて打ちとけてくれる日がくるだろう――十分にかれを悩ませたことがわかれば。もしかしたらそれは、ガリオンが悩んでいることをもっとあからさまに示せばなお早まるかもしれない。
 だがその他の問題については何らの重要な進展もみられなかった。かれはやはり軍を率いてカル=トラクと戦わなければならないし、ベルガラスはいまだに力が回復した兆しは見せていなかった。そしてガリオンが知るかぎり、今も〈要塞〉のどこかで暗殺者が刃をといでいるかもしれないのだ。かれはため息をつくと、ひとり心ゆくまで悩むことのできる自室に引き返すことにした。
 それからしばらくしてポルおばさんの部屋へ来るようにとの伝言があった。ガリオンがすぐに部屋に向かうと、そこには火のそばで相変わらず針を動かし続けているポルおばさんの姿があった。その向かい側ではおなじみの着古した衣服をまとったベルガラスが、座り心地のよい深い椅子にゆったりと腰をおろしていた。老人は足を台座に乗せ、片手にエールのジョッキを握っていた。
「ポルおばさん、ぼくに用があるんだって?」かれは部屋に入るなりそう言った。
「ええ」彼女は答えた。「まあ、お掛けなさい」そう言ってからおばさんはガリオンをじろじろ見まわした。「まだ、あんまり王さまらしく見えないわね。どう? おとうさん」
「もう少しやつに時間をやった方がいいぞ、ポルよ」老人は答えた。「何といってもまだ王になってから間がないのだからな」
「二人ともずっと知ってたんだろう?」ガリオンは非難するように言った。「ぼくが誰だってことを」
「もちろんよ」ポルおばさんはあの腹だたしくなるほど落着きはらった口調で答えた。
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