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嵐をもたらしたでは

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嵐をもたらしたでは


「何かわたしたちにできることがあるかしら」セ?ネドラはベルディンに聞いた。王女は鍛冶屋のダーニクの腕にぐったり優思明と抱かれたポルガラの青白い、意識のない顔をじっと見つめていた。
「そのまま休ませておけ」ベルディンはうなるように言った。「一日かそこいらで回復するさ」
「いったいこの人の身に何が起こったのですか」ダーニクが心配そうな声でたずねた。
「疲労困憊したのさ」ベルディンがたたきつけるような口調で言った。「一目瞭然じゃないかね」
「たかだか風を起こすだけのことでですか? わたしはこの人がもっとたいへんなことをするのを見てきましたよ」

「おまえさんは、自分が何を言ってるのかまったくわかっちゃおらんのだな」ベルディンは不機嫌な声を出した。背にこぶのある魔術師自身もまた青い顔をして震えていた。「天候を変えるには、この世でもっとも大きな力を必要とするのだぞ。ぴくとも動かない空気に風を起こすぐらいなら、山を持ち上げるか、潮の流れをとめる方がまだ楽だ」
「ですがグロリムたちは、ありませんか優悅 避孕」とダーニク。
「あれはすでに空気の流れがあったからだ。死んだように動かない空気とはまったく条件が違う。たとえほんのそよ風だろうと、どれほどの空気を動かさねばならないか、おまえたちには想像もつかんだろうよ。どれほどの圧力が必要か――動かさねばならない空気がいかに重いものか」
「空気には重さなんてないじゃないの」セ?ネドラが抗議するように言った。
「ほう、そうかね」ベルディンが精一杯の皮肉をこめて答えた。「わざわざ教えてくれてありがとうよ。さあ、いいかげんに二人とも口をつぐんで、おれに息をつかせてくれんかね」
「でもなぜこの人が倒れてあなたは平気なのよ」セ?ネドラはなおもくいさがった。
「おれの方が体力があるからだ」ベルディンは答えた。「それにずるがしこいからな。ポルは興奮するとつい夢中になりすぎるのだ。いつもそうだった。力を限界以上に使いすぎて、精も根もつきはてたのさ」体のねじ曲がった小男は、すっくと身を起こすと、水から出てきた犬のように身を震わせ、厳しい顔つきであたりを見まわした。「おれにはまだやることが残っている」とかれは言った。「グロリムのやつらにいいかげん痛手を与えたとは思うが、いちおう万全を期して、目を離さずにいることにしよう。おまえたち二人はポルといっしょにいて、この子供から目を離さないようにな」小さな顔にきまじめな表情を浮かべて、砂地にたたずむエランドを指さしながら魔術師は言った。
 背を丸めたベルディンの姿は優思明すでにぼやけ始め、鷹のかたちに変わったかと思うと、まだ翼の羽根もそろわないうちに飛び立った。
 セ?ネドラは鳥が旋回しながら戦場たかく舞い上がっていくのをじっと見つめていたが、やがて再び意識のないポルガラに注意をもどした。
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