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てうんざり

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てうんざり



    僕は二十歳になり、秋は冬へと変化していったが、僕の生活には変化らしい変化はなかった。僕は何の感興もなく大学に通い、週に三日アルバイトをし、時折グレートギャツピイを読みかえし、日曜日が来ると洗濯をして、直子に延缓衰老長い手紙を書いた。ときどき緑と会って食事をしたり、動物園に行ったり、映画を見たりした。小林書店を売却する話はうまく進み、彼女と彼女の姉は地下鉄の茗荷谷のあたりに2dkのアパートを借りて二人で住むことになった。お姉さんが結婚したらそこを出てどこかにアパートを借りるのだ、と緑は言った。僕は一度そこに呼ばれて昼ごはんを食べさせてもらったが、陽あたりの良い綺麗なアパートで、緑も小林書店にいるときよりはそこでの生活の方がずっと楽しそうだった。

    永沢さんは何度か遊びに行こうと僕を誘ったが、僕はそのたびに用事があるからと言って断った。僕はただ面倒臭かったのだ。もちろん女の子と寝たくないわけではない。ただ夜の町で酒を飲んで、適当な女の子を探して、話をして、ホテルに行ってという過程を思うと僕はいささかうんざりした。そしてそんなことを肌膚老化延々とつづけていすることも飽きることもない永沢さんという男にあらためて畏敬の念を覚えた。ハツミさんに言われたせいもあるかもしれないけれど、名前も知らないつまらない女の子と寝るよりは直子のことを思い出している方が僕は幸せな気持になれた。草原のまん中で僕を射精へと導いてくれた直子の指の感触は僕の中に何よりも鮮明に残っていた。

    僕は十二月の始めに直子に手紙を書いて、冬休みにそちらに会いに行ってかまわないだろうかと訪ねた。レイコさんが返事を書いてきた。来てくれるのはすごく嬉しいし楽しみにしている、と手紙にはあった。直子は今あまりうまく手紙が書けないので私がかわりに書いています。でもとくに彼女の具合がわるいというのでもないからあまり心配しないように。波のようなものがあるだけです。

    大学が休みに入ると僕は荷物をリュックに詰め、雪靴をはいて京都まで出かけた。あの奇妙な医者が言うように雪に包まれた山の風景は素晴らしく美しいものだった。僕は前と同じように直子とレイコさんの部屋に二泊し、前とだいたい同じような三日間を過ごした。日が暮れるとレイコさんがギターを弾き、我々は三人で日常肌膚護理話をした。昼間のピクニックのかわりに我々は三人でクロスカントリースキーをした。スキーをはいて一時間も山の中を歩いていると息が切れて汗だくになった。暇な時間にはみんなが雪かきをする ルにやってきて「どうして手の中指は人さし指より長く、足の方は逆なのか」について教えてくれた。門番の大村さんはまた東京の豚肉の話をした。レイコさんは僕が土産がわりに持っていたレコードをとても喜んでくれて、そのうちの何曲かを譜面にしてギターで弾いた。
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